第27章 ゼロの恋人
降谷「僕にここにいて欲しいのか?」
僅かに生まれたいたずら心に、少し遠回しな言葉を使うが…
椛「うん、だからそう言っている。」
彼女には、すぐに降谷のいたずら心は見抜かれたようで、即答で返された。
椛のその様子に降谷は一度、『降参』とばかりに苦笑すると
降谷「じゃあ、朝まで一緒にいる。」
椛「うん!!」
彼の返答を聞くと、嬉しそうに返事をした後、腕から離れて処理が終わった食材を、冷蔵庫にしまっていった。
椛「朝ごはん漬け丼でいい?」
降谷「あぁ、もちろん。
買いすぎた責任は取るよw」
椛「あははは!
そういうつもりで聞いたんじゃないよw
漬け丼にするのに明日は普通のお米と、酢飯、どっちがいいか聞きたかったの!」
彼女の質問に一呼吸考え込み…
降谷「酢飯が良い…」
椛「分かった、酢飯ね、了解♪」
別に大した事ない、至って普通の日常的な会話だが…
当たり前のように、彼女の方から翌朝の食事の相談話が出てくるこの状況に、愛しい気持ちがこみ上げる。
降谷(誰かと一緒に過ごすこんな平和な日常が、俺の人生に訪れる日が来るとはな…)
洗い物が終わると、濡れた手を拭き、彼女が作業している後ろのキッチンカウンターに身体を向ける。
朝用のお米の計量をしようとしている彼女に、後ろからギュッと抱き着く。
椛「今度はどうしたの?」
回された腕に、手を添えて尋ねる。
降谷「俺、今凄く幸せだ。
椛と出会えて…
本当に良かった…」