第27章 ゼロの恋人
椛(やだもう…
好き過ぎる…)
『彼にこんな事言われて、断れる女性が世の中にいるのだろうか』とふと思うが…
椛(いやいや、他の女性にされたら困る!)
椛からの返答を待っているのか、降谷は彼女を見つめたまま、動かない。
椛は急に抱き寄せられた事によって、彼の胸の前に挟まってしまっていた、両の腕をそのままゆっくりと…
彼のワイシャツの上を辿るように首元まで沿わせると、彼の首に両腕を絡ませる。
更に近づく為に、少しずつ踵を上げて、つま先立ちになると、首を左少し傾けて彼の唇に自身の唇を重ねた。
暫く彼の唇の柔らかさを堪能すると、
『チュッ』と言うリップ音と共に唇を少し離し、額を合わせる。
椛「おかえり、零。」
柔らかく微笑みを向け、先程彼を玄関に迎え入れて1番に言ったセリフを、再び口にする。
そのままの流れで、ワイシャツから覗く彼の左の首筋にキスを落とし、唇を沿わせながら更に下の彼の鎖骨にもキスを落としてから、踵を床に付け背伸びを解いた。
言われた通り、彼の要望に応えたつもりだったが…
降谷は返事を返さず、固まって動かないまま、彼女の様子を見続けている。