第25章 コンフィデンシャルのその先に
降谷「管理官は、彼女と諸伏の関係をご存知だったんですか?
それで彼女に依頼を?」
少し怒りを含むその声色に、降谷の心情を察するが…
黒田「いや、知らなかったさ。
それは偶然だ。
2週間ほど前に、彼女の口から聞いて知った。」
降谷「そうですか…。」
二人の過去を利用された様に感じて、一瞬噛み付くが…
どうやらそれは違ったようだ。
降谷「ですが、協力者とはいえ、彼女はあくまで一般人ですよ。
いくらなんでも、依頼内容が重過ぎるのでは無いですか?
現に今回、巻き込まれて彼女はこの状態だ。」
未だベットに横たわる彼女に視線を向ける。
命に別状は無いにせよ、消えない傷跡を身体に残してしまった。
黒田「…普段手段を選ばないお前が、そんなことを言うなんて少し珍しいな。」
降谷「彼女の任期はいつまでなんですか?
この機に引いて…」
黒田「それを決めるのはお前では無い。」
降谷の言葉を遮るように言い、立ち上がる黒田。
降谷「ですが!」
黒田「私は一度署に戻る。
今後の事はまた、彼女が目が覚めた後にする。」
納得できないと、降谷も椅子から立ち上がる。
ドアに向かい歩き出す黒田。
だか、一度静かに立ち止まると…
黒田「…私も彼女を、危険な目に合わせることを良しとしているわけでは無い。
全てはこの国の為だ。」
黒田はそのまま静かに部屋を出て行き、また室内には静寂が訪れる。
満月が近いのか。
月が先程よりも上に上がってきたのか。
月明かりが照らす室内は、先ほど部屋に入って来た時よりも、少し明るく感じた。