第24章 アクアパーク川品
安室(どうか間に合ってくれ!)
そのまま彼女の元へ急ぎ、手を伸ばして、彼女の手を掴む。
彼女の身体を引き寄せると、両頬に手を添えて唇を合わせ、自身の息を彼女に吹き込んだ。
彼女は朦朧とする意識の中、肺に空気が行き渡る感覚を感じ、ゆっくりと目を開くと、目の前には安室の姿。
椛(安室さんは、目を瞑ってても綺麗ね…)
その姿を見て、飛びかけていた意識が戻ってくる。
目を開くと、彼の顔がハッキリと目に映る。
心配と安心が入り混じった様な表情をしていた。
水中独特のブルーの背景に、彼のミルクティー色の髪が透けていて、
『とても綺麗だな』
なんてぼんやりと思うが、安室に引っ張られながら、2人で水面を目指して泳ぐ。
安室「ぶはっ!」
椛「はぁっ!」
水面まで来ると、彼女を抱えながらプールサイドまで泳ぎ、プールから出る。
大きな部分は大分落ち切った様だが、未だコンクリートの細かいかけらが、バラバラと上から降って来ていた。
そのまま彼女を横抱きにすると、観客席を駆け上がり、安全な場所に彼女を一度下ろす。
先程、コンクリートに挟まっていた彼女の右足の太ももから、大量の血が溢れていた。
安室「椛さん、ちょっと我慢してください。」
自身が着ていたパーカーのフードコードを引き抜くと、止血の為に彼女の太ももの付け根に縛り付ける。
椛「うっ…」
プールの海水にさらされた傷口が痛むのか、小さく呻き声を上げる。