第24章 アクアパーク川品
入口まであと少しの所で、彼女が走っていた床がいよいよ一気に抜ける。
椛(まずい!)
落ちることを覚悟するが、予想していた浮遊感は訪れず。
彼女の腰に左腕を回して、しっかりと抱きしめる安室。
右手はむき出しになった鉄筋を掴み、2人共に落下を免れた。
宙に浮かぶ2人の体重を、彼の右手1本で支えていた。
しかし素手で握っているため、鉄筋を掴んでいる手からは血がにじんでくる。
椛「安室さん!
無理だよ!
私を放して!」
彼が掴んでいる鉄筋も確実に下がって来ていて、ここが崩れるのも時間の問題だ。
安室「…俺はもう、大切な人をこれ以上失うのは…
こりごりなんだ…」
椛(安室さん…)
安室「椛さん、絶対僕から離れないで下さいよ…」
そう言って安室は下を確認すると、鉄筋を掴んでいた手を離した。
訪れた浮遊感と共に落下すると、
『ドボン』という大きな水しぶきと共に、冷たい水の感触が2人を襲う。
2人が落ちた真下は、先ほどまでショーが行われていたイルカショー用の大きなプールだった。
落下の瞬間まではしっかりと安室の身体を掴んでいたが、入水の衝撃でお互い手が離れてしまう。
彼女は水中で目を開けると、自分達と同じように上から落ちてきた、いくつもの瓦礫が見える。
明るい方に目を向けると、水面まであと5mといった所だろう。
水面に向かって泳ぎ始めると、上から崩れた瓦礫が更に落ちてくる。
それらを避けながら泳いでいくが、人一倍大きなコンクリートの塊が落ちてきた。