第24章 アクアパーク川品
全然噛み合わない会話を続ける安室に対して、流石にちょっといつもとは違う様子を感じ取り、隣に並ぶ安室に改めて目を向ける彼女。
すると彼女からの視線に気付いたのか、安室も視線を向けた。
2人の視線が重なる。
爆弾犯かも知れない人物を追っている状況とは思えないほど、彼は何故か優しく柔らかい笑みを浮かべていた。
流石にこのタイミングで、その表情を浮かべる安室に驚き、目を見開き彼を見つめる彼女。
安室「…さぁ、開けますよ。」
そう言って、安室は先程追っていた人物が入ったであろう扉のドアノブに手をかける。
その言葉に、彼の笑みに奪われていた意識を、
『今は目の前の事に意識を集中させよう』
と目の前の扉に視線を移した。
音を立てない様、慎重に扉を開けると部屋の中に視線を光らせる。
思った以上に部屋の中は大分広そうだ。
1番奥の壁は、暗いせいもあるだろうが、ここからでは見ることが出来ない。
水族館で使う機材や備品が、棚に並べられている様子が入り口からは見て取れる。
どうやらこの部屋は、倉庫代わりの部屋になっている様だ。
足を忍ばせて2人、室内に入って行く。
水槽の用の循環ポンプも近くを通ているのか、モーター音と太い配管の中を流れる水の音が、常時聞こえている。
おかげで気配を忍ばせやすく、都合が良い。
前を歩いていた彼が立ち止まり、左手を軽く上げて、後ろにいる彼女に「ストップ」の合図を送る。
彼の広い背中の後ろにいた彼女は、前が見えない。
脇から覗き込むように、彼の視線の先に目をやると、棚と棚の間の通路でしゃがみ込み、何やら作業してる様子の男の姿が見えた。