第19章 東都ビックサイト
トランクを開けると、積んである服から、動きやすく暗めの色の服と、キャップを取り出した。
大き目の紙袋にそれらを詰めると、助手席に置き、運転席に乗り込む。
運転席に座ると一呼吸して、頭の中を切り替える。
降谷(あの後彼女は、真っ直ぐ家に帰ったのだろうか。)
彼女と別れてから、今回の件の後処理に追われていたため、まだ連絡はしていない。
時刻は20時を指している所だった。
イヤホンマイクを装着して、車のアクセルを踏み込む。
駐車場から地上に出ると、彼女に電話をかけた。
暫くコールを鳴らすが、彼女は出ない。
安室(今は無理か、、、)
そろそろ切ろうとした頃合いで、相手先が出る。
椛「もしもし。」
つい数時間前まで一緒にいたにもかかわらず、彼女の声が耳に届くと、胸が高鳴り、口角が自然と上がる。
安室「安室です。
すみません、今忙しかったですか?」
椛「ちょうど今、お風呂から出て来たところで…
お待たせしました。
大丈夫ですよ。」
その言葉を聞いて思わず、お風呂上りの彼女の姿を想像してしまうのは男のサガか…
長野で見た、湯上がりの浴衣姿の彼女を思い出した。
安室(俺はもう、いよいよ末期だな…w
はぁ……)
そんなことが頭の中には浮かぶが、先ほどまで一番気になっていたことを、電話口の彼女に問いかける。