第19章 東都ビックサイト
自身の腕の中に、すっぽりと収まる彼女。
一度抱きしめてしまうと、愛おしくも尊い感情がとめどなく溢れ出る。
もう絶対に、離したくない衝動に駆られる。
安室(頭では分かっていても…
もう無理だ…
この感情をこれ以上、抑える事は出来ない…
君の事が好きだ…
どうしようもなく…
もう絶対に離したくない…)
布越しでも、彼女の温もりと体温を感じた事で、今までギリギリで保っていた感情の蓋が外れたのか、愛しい想いが溢れて止まらない。
自分の側に置く事が、危険な事だと分かっている。
実際に過去、親友の景光は『それが理由で』彼女の事を『守る為』に『手放して』いる。
しかし、腕に収めた心地よい高揚感と、彼女から香る甘い香りに酔いしれると、もう覚悟を決めるしかないと腹を括る。
彼女の背中に回していた手をそのまま背骨に沿って徐々に上まで撫ぜる上げると、後頭部を撫で上げる。
安室「椛さん…。」
酷く愛おしそうな声で彼女の名前を呼ぶ。
そして、抱きしめていた腕を少し緩めると、顔を見合わせた。
お互いの顔がすぐ目の前にある。
彼女は、自分よりも幾分背の高い彼を見上げると、今まで見た中で、1番柔らかい笑みを浮かべている彼の表情が目に入った。
椛(本当、この人はなんて美しい瞳をしているんだろう…)
ブルースターの様な瞳に、吸い込まれそうな感覚に陥いる。
安室「椛さん…
俺は…」