第19章 東都ビックサイト
淡々と言葉を紡ぐ彼の真意は、まだ見えない。
未だ彼から掴まれた手に、「ギュッ」と力が入る事を感じた。
椛(安室さん??)
そんな彼を、出会った頃と変わらない、真っすぐな瞳で見つめる彼女。
唯一変わったものがあるとすれば、2人の心の距離感だろう。
安室(…君は一体何者なんだ?
君は銃も扱えたのか?
先ほどの射撃の腕は?
どこで身に着けた?
そもそも何故、俺に近づいてきたんだ?
ヒロの事は?
どこまで知っている?
……)
まだまだ、上げるとキリがない彼女に対する疑念を思い浮かべる。
安室(だがもう…
それよりも…
俺の傍にいると、そもそも危険なんだ…
俺は組織に潜入している捜査官の身だ。
巻き込みたくない。
危険に晒しなくない。
傍に置きたくない。
けど傍に置きたい…
どこか平和な場所に閉じ込めて、真綿でくるむように、すべての危険から疎外させて、平和に暮らして欲しい。
けど傍にいて欲しい…
君が隣にいると、とても心地良い。
そして心強いと、感じ始めている自分がいる。
今は亡き大切な仲間たちと過ごしていた、あの日々と近いものも感じる。
酷く懐かしい…あの頃の感覚が蘇る。
何も言わずとも、
同じ先を見て、
一気に共に走り出すような、
あの感覚……)