第19章 東都ビックサイト
爆弾の方に私たちは行ってしまった為、その後の2人の男の動向は確認出来ない。
未だ、喧騒冷めやらぬ人だかりを少し抜け、人だかりがまばらなところまで、2人でやって来た。
会場を出てから、人だかりの中を逸れぬ様に彼女の腕を引きながら、前を歩いていた彼がふと立ち止まり、真後ろにいる彼女の方に振り返る。
立ち止まっても掴まれたままの手に、彼女は目を向けていたが、安室の視線を感じて顔を上げた。
彼を見上げると、逆光で影がかかっているが、何とも言えない複雑な表情をしてる事が確認出来る。
そのまま暫く、どちらも言葉を発しないまま見つめ合う。
椛(…凄い見られてるけど…
安室さんは今何を考えているんだろうか。
追いかけて行った事、まだ怒っているのかな…
発砲した事の方を怒っているのかな…
いや両方か…)
時間にすると数秒だったのかもしれないが、見つめ合っていると、時の流れがひどく遅く感じた。
そんな中、先に言葉を発したのは彼の方。
安室「…出来ることなら、君を危険な目には合わせたくはない。」
椛「うん?
追いかけたことを怒っているのよね?
ごめんなさい。
けどあの時は、追いかけた方が良いと私も判断したの。」
一度素直に謝るが、こちらにも譲れない言い分はある。
安室「…状況判断としてはあれが最善だった。」
椛「うん…」