第16章 ゼロの銃弾
彼の背中に回していた手を解き、両手で自身の顔を覆い隠す。
泣き顔を見られまいと、俯き涙を流し続ける彼女に、声をかける。
景光「椛さん…
お願いだ…
顔を上げて。」
『イヤイヤ』と言う様に首を横に振り、そのまま1人泣きづつける。
景光「…どんな椛さんの表情も、
目に焼き付けたいんだ…
大丈夫だから…
顔を上げて下さい…
お願いだ…。」
優しく囁く彼の言葉に、彼女はゆっくりと顔から手を離す。
目の前には、いつもと変わらない優しい瞳を宿した彼の顔。
彼女の両頬を自身の手で包み、そのまま指で彼女の涙を拭う。
景光「…今回は出来た。」
椛「…??」
そう言って、彼は至極満足そうに、彼女の涙を続けて拭う。
景光「これからも平和に、この国で幸せに暮らせるように…
椛さんの幸せを、心から祈っています。」
懐かしいセリフと共に、涙の跡が残る彼女の瞼に、景光はそれぞれ唇を落としたあと、最後に額にゆっくりと唇を落とす。
そして景光の体が彼女から、静かに離れた。
そのまま後ろに立つ、3人と顔を見合わせて微笑み合うと、4人は頷き背を向けて歩き出す。