第16章 ゼロの銃弾
そんな事を、抱きしめられた彼の腕の中で思っていると、頭を撫ぜられる感触がする。
椛(なんて優しい手つきで、撫ぜる人なのか…。
そう言えば、食材の扱いも普段から優しい人だったな…。)
すると、再び聞こえる低音ボイス。
赤井「…助けてやれなくて…
本当にすまなかった…」
椛「っっ……」
先程よりも、より近くに耳に届くその言葉に、涙は止まる事を知らない。
涙を流しながら彼の胸に顔を埋め、上手く声にならない言葉を懸命に紡ぐ。
椛「ううん…
話してくれて…
ありがとうぅ…」
そのまま、涙を流す彼女をあやす様に、赤井は暫く彼女を優しく抱きしめていた。
暫くそのまま泣き続けていた様だが、どうやら落ち着いて来たのか、背中に触れる手から、だんだんと呼吸がおだやかになってきた事を感じた。
なんとなく、先ほどまでより、重心がこちらにかかってきている様な気がして、
少し腕を緩めて彼女の顔を覗き見る。
赤井(…泣き疲れて、寝てしまったのか…。)
涙の跡が残る彼女の顔を覗き見ると、少し胸が痛むが、過去は変えられないし、起きてしまった事は受け入れて乗り越えていくしかない。
そのまま、彼女をソファに静かに寝かせると、ゲストルームから、掛け布団を取って来て、彼女にかける。
赤井(椛なら…大丈夫だろ。)
ソファに寝る彼女の頭を軽く撫ぜ、先程まで飲んでいた紅茶セット下げ、キッチンに戻って行った。