第16章 ゼロの銃弾
黒田と別れてから、目的の場所まで一直線で向かってきた。
そして目当ての建物が目に入る。
見慣れた門の前に立つとインターフォンを押した。
「はい、どうぞ。」
短い返事と共に、重厚な扉の鍵が開いた。
中庭を抜けると、玄関扉をノックする。
すぐに扉は内側から開かれた。
沖矢「早かったですね。」
椛「急に連絡してすみません。」
沖矢「いえ、問題ありません。
家で料理をしていただけですから。」
彼女が玄関扉を通ると、鍵をかけ、2人でリビングの方へ向かう。
リビングに入ると、出汁のいい香りが部屋に充満していた。
どうやら、本当に料理をしていた様だ。
沖矢「お茶を入れましょう。
先に座っててください。」
そう言ってソファに座る様、促す。
椛「料理途中でした?
そしたら私が入れましょうか?」
沖矢「いえ、もう大丈夫ですよ。
あとはもう、煮込むだけですから。」
椛「そうですか。」
パッと見、普通に会話をしているが、なんだか若干彼女の纏う雰囲気が、張り詰めていると感じている沖矢。
沖矢「それで?
どうしたのですか急に?
こんな事、初めてですよね。
何かあったのでしょう?」
お茶を入れたポットとカップをトレイに乗せて、キッチンから出てきた。
ローテーブルに紅茶セットを並べる。
暫くすると、紅茶の良い香りが広がってくる。
今日の茶葉は、アールグレイのようだ。