第16章 ゼロの銃弾
数ヶ月前、黒田さんから協力者の話をもらった時…
正直『チャンスだ』と思った。
もちろん、話が来た限りは公安の協力者として、
『日本の為に尽力出来れば』
と言う思いもあった。
けど何より、彼との過去が無ければ、そもそも警察組織や、かたや公安に興味を持つことは無かっただろう。
協力者の話は最悪受けたかもしれないが…
彼との事がなければ、即決は間違いなく出来なかっただろうし、向き合い方も今とは異なっていただろう。
『この話を受ければ、ヒロ君のその後の事が分かるかもしれない』
真っ先にそう思った。
監視任務だと聞いた時、なんと無く勝手に
『監視対象は女性だろう』
と思って引き受けたが…
まさか相手が男性だなんて、思ってなかった。
監視対象である、その男性潜入捜査官のプロフィールを見て…
彼と同い年、そして所属は警察庁警備局警備企画課。
『まさかヒロ君と警察学校の同期では?』
と正直一瞬頭に浮かんだ。
それに、その後告げられたその潜入捜査官の名前。
『降谷零』と聞いた時は、何か背筋が波打つ感覚があった。
あの時ヒロ君は、名前ではなく
『あだ名がゼロなんです。』
と確かに言っていた。
ヒロ君から話には散々聞いていたが、その『ゼロ君』には会ったこともなければ、写真も見せて貰ったことが無かった為、顔も容姿も知らない。
『僕より首席のゼロの方が優秀だ』と言っていたし…
それならその『ゼロ君』が公安関連に配属されていても、なんら不思議でもない。
まさかね…
流石にそこまでの偶然、あるわけないでしょ?
と引き受けた直後はそう思っていた。
ポアロで初対面を果たすまでは……