第16章 ゼロの銃弾
黒田「警視庁公安部所属の諸伏景光。
君の言う通り、彼は公安に配属された。」
椛(ヒロ君…。)
黒田が話す間も、警察官の制服を見に纏った彼の写真を、ジッと見つめている彼女。
写真を見ていると、当時の記憶が頭の中にどんどんと鮮明に蘇ってくる。
黒田「その後、潜入捜査官として、ある組織に潜入した。
椛さんに監視をお願いしている『安室透』と同じ潜入先だ。」
椛(えっ?)
画面から目を離せないでいたが、黒田のその言葉に彼女は顔を上げる。
黒田はパソコンを再び操作して、また彼女に新しい画面を向けた。
そこには、先ほどの証明写真よりも大分男っぽくなった景光の姿。
顎から耳下にかけて髭も見える。
黒田「暫く組織に潜入しているうちに、降谷と同時期にコードネームを与えられた。
コードネームはスコッチ。
暫くは、そのまま潜入捜査を続けていた。」
椛(…『続けていた?』)
椛「…その先は?
どうなったんですか?」
彼女の質問に黒田は中々か答えない。
黒田「その写真が、私の所に送られてきた最後の写真だ。」
椛「……最後。
…いつですか?」
黒田「そろそろ2年になる。」
椛「2年…」
黒田の言葉に、再び写真を見つめると、自身が知らない景光の容姿に、目が離せなくなる。
黒田「…。」
黒田はそれ以上は話す気がないのか、口を噤んでしまった。