第16章 ゼロの銃弾
暫く沈黙が続くが、、、
黒田「…君と、彼との関係は?
恋人か何かか?」
椛「彼は私の生徒さんで、当時の想い人でした。
付き合う事は、残念ながら出来ませんでしたが。」
黒田「…そうか。」
そう一言漏らすと、小さく息を吐く。
彼女は変わらず、黒田の事を真っ直ぐ見つめている。
黒田「…上に上がろう。」
そう言うと、付いてくるよう促し、2人は射撃場を後にした。
エレベーターに乗り、長い廊下を進む。
見覚えのある扉の前に着くと、中に入るよう促される。
あの日、初めてここに来た時に通された部屋だ。
契約書にサインをしてから早数ヶ月、部屋の様子は何も変わっていない。
けど、
『私が置かれる環境は随分と変わったな』
と、ふと彼女は思い、あの時と同じソファに2人、腰掛けた。
するとすぐにドアがノックされる。
黒田がドアに向かうと、少しだけ扉を開けて、隙間から何か受け取る。
今回はどうやら、ノートパソコンだけの様だ。
黒田はノートパソコンを開くと、暫くカタカタと作業し、そしてあの時と同じ様にパソコン画面を彼女によく見える様、パソコンの向きを変えた。
彼女が画面に目を向けると…
椛「っっ…。」
青い背景に、警察官の制服に身を包んだ景光の姿。
恐らく卒業後すぐの写真だろう。
あの時、見る事が叶わなかった景光の警察官姿に、思わず目頭が熱くなる。