第15章 郷愁の味覚(テイスト)
何も答えてくれない彼に、
『もう彼の心は決まっているのだな』と察する。
溢れる涙を堪えて、ちゃんと最後にこちらも別れを告げよう。
そう彼女は心に決める。
椛「ヒロ君…
ヒロ君ならどんな部隊にいても、きっと素晴らしい警察官になれるよ。
友達思いで、優しくて、明るくて、頭が良くて…
きっとどんな困難でも乗り越えていけるよ。
絶対。必ず。
これからもずっと、ヒロ君の事、応援してるよ。
私も…
大好きだったよ。
身体は大事にしてね。
じゃあ、元気で。」
切ろうと、耳からスマホを離した瞬間…
景光「…待って!!」
彼の声が耳に入った。
再び耳を近づける。
景光「…もし、
もしも今後また…
椛さんに会える事があったら…
また一緒に、サンドウィッチ…
作ってもらえませんか??」
椛「っっ…。」
彼の言葉に、溢れる涙が止まらない。
思わず口元を手で押さえる。
口元を押さえるその手も、あっという間に、溢れる涙で濡れていく。
どんな思いで、そんな言葉を彼は口にしてくれたのだろう。
胸が押し潰される様に苦しい。
上手く息をする事が出来ず、上を見上げる。
上を見上げると、次から次へと溢れる涙が、頬を更にどんどんと濡らしていく。
椛「うん…。
…もちろん…
いいよっ…」
溢れる涙に耐えながら、声を絞り出す。
最後はちゃんと、私は笑えて言えていただろうか。
景光「ははっ!
…ありがとう椛さん…
本当に。
本当に、ありがとう。
じゃあ…
また。」
椛「うん…またね。」