第15章 郷愁の味覚(テイスト)
『配属先は決まったの?』
と言う質問をした後、彼が息を吸う音が微かに電話越しでも聞こえた。
いつもどんな事でも、真っ直ぐに私の質問に答えてくれていた彼が、答える事を流した。
きっと『言わなかった』のではない。
『言えなかった』のだろう。
彼は優秀だ。
おそらく、私の様な『一般の人間』には言えない、
『特殊部隊』への配属が決まった。
直感的にそう思った。
本来だったらこの電話もダメなんじゃ無いだろうか…?
もしそうだとしたら、今、彼はどこか1人で、電話をかけてきてくれているのかも知れない。
もう彼の声を聞くことは、本当にこれが最後なのだろうか。
わたしはなんて言えばいい?
なんて言う事が正解なのだろう?
椛「…ヒロ君…。
もう…
私達、会う事は出来ないの?」
単語を発するたびに胸が詰まる。
景光(…もう椛さんとは会えない。
どんな任務がこれから与えられるのか、予想がつかない。
もし何かあった時、巻き込む事は出来ない。
覚悟を決めろ………)
配属先を告げた教官には、
『家族や恋人、友達の事が大切なら、大切な人こそ縁を切った方がいい』
そう告げられていた。