第15章 郷愁の味覚(テイスト)
『会ってみたい』
という彼女の言葉に、酷く罪悪感を感じる。
思わず苦笑してしまう。
胸が詰まる。
会話のキッチボールが止まったことを不審に思い、再び声をかける。
椛「ヒロ君?
どうかした?」
景光「いえ、なんでもないです。」
椛「そう?
そういえば配属先は決まったの?」
彼女のその言葉に、景光は何かを決意するかの様に天を仰ぎ、軽く深呼吸をする。
景光「椛さん。」
椛「うん?」
景光「…椛さんとは色々な話をしましたよね。
最初は講座で、先生で。
もちろん今も先生ですけど。
それから講座の後にお茶に行った時も。
カフェの閉店までずっと話をしたり。
それ以外の出かけ先でも。
本当に沢山。」
椛「…うん。」
景光「椛さんが話してくれた話で、
『この大好きな日本の為に何が出来るか、何を残せるか。
色々考えて、行動して、行き着いた結果、
一度の人生で全部1人でやり切ることは出来ない。
だから私は今回の人生、これからの日本の為に、失われつつある【本質の日本の食文化】を1人でも多くの次世代に繋げる事に、心血を注ぐ事に決めた。』
と話してくれた事がありましたね。」
椛「うん…そうね…」