第15章 郷愁の味覚(テイスト)
今の話を聞いて、だんだん冷静になってきた景光は、目の前に座って話す彼女の顔を改めて見る。
いつも見る彼女の姿は、明るく楽しそうに元気で前に立って、話している姿のイメージしか無い。
しかし今、目の前に座る彼女の表情はまるで『能面の様』。
目も全く笑っていない。
景光(そうだよな…
椛さんだって、いくら何でも、最初から何とも思ってない相手と付き合う訳がない。
一緒にいるうちに『無』になって、度々繰り返される事によって『無』に慣れてしまったんだろうな…。)
そう思うと胸が苦しくなってくる…。
景光「…それ、引っ越したらそこで問題は解決するんですか?」
椛「いやぁ〜、いつもの流れだと、連絡取れなくなると、仕事のHPの問い合わせフォームから連絡してくる様な人もいたし。
講座中にいきなり会いにきたり、会うために講座申し込んできたりとか〜…
色々かな。」
変わらず淡々と話す彼女。
そして、その話を聞いてドン引きしている景光。
景光「それで?
いつもどうしてたんですか??」
椛「そこまでくると、営業妨害だからアウトだよね。
うちの生徒さん達、良い人ばかりだから、乗り込んでこられたら、事情を説明するとみんな守ってくれるよ♪
有難い。」
景光「呑気すぎる…」