第15章 郷愁の味覚(テイスト)
電気を消して戸締りをする。
外に出ると、当たり前のようにキャリーケースの取っ手を持っていてくれる彼。
椛「引きずるだけだし、自分で持つよ。」
そう声をかけても
景光「なおさらですよ。」
と言って譲ってくれない。
ここは彼に任せることにして、素直に隣を歩く。
駅までの途中にあるカフェに入り、空いている席に着き、荷物を下ろした。
景光「椛さん、何にしますか?」
椛「私は紅茶ストレートにします♪」
景光「じゃあ僕行ってくるので、椛さんはここで待っててください。」
椛「うん、ありがとう♪」
カウンターに向かう彼を見送る。
椛(今日はなんだか、至れり尽くせりだな、、、。)
暫くすると、トレイに飲み物を乗せて彼が戻って来た。
彼女が戻って来た彼に、代金を渡そうとすると
景光「これぐらいいいですよw」
と言って受け取ってもらえない。
椛「私、ちゃんと社会人だよ。
学生さんに出してもらえないよw」
景光「そうかもしれないけど、僕は男なんだから良いんですよ。」
ちょっとムッとし膨れ面をされてしまった。
椛(気が効かなかったのは私の方だな…)
椛「そうだよね、ごめん。
ヒロ君、ありがとう。
ご馳走様です♪」
御礼を言って紅茶を受け取り、彼に向かって微笑む。
満足してくれたのか、膨れ面は消えて、微笑み返してくれた。