第14章 長野のコウメイ警部
椛「それに……
幼い頃からの親友が居たみたいで、その親友の事を、とても大切に思っていたようでした。
…友達思いの、本当に良い好青年だったと思います。」
彼女が話す昔話が、やけに耳に残る。
『ゼロ』と呼ぶ声が、景光の笑顔と共に、再び安室の脳裏に鮮明に甦る。
静かに黙ってしまった安室の方に視線を向けると、何かを考え込んでいるのか…
未だ、何とも言えない複雑な表情をしていた。
椛「…では、私は行きますね。
安室さんは明日から、ポアロの再オープンの準備ですよね?
オープン落ち着いた頃合いを見計らって、またお茶しに行きますね♪」
声をかけられると、一瞬ハッとした表情を見せるが、いつもの笑顔に戻り、
安室「えぇ、またお待ちしてますよ。」
そう言った彼に最後、笑顔で挨拶を向けると、彼女は車を降りた。
彼の車が発車する所を、いつものように見送る。
車が夜道に消えて見えなくなると、今の今まで張り詰めていた緊張感が一気に溶けて、ドッと疲れが押し寄せた。
椛(流石になんか昨日から色々気疲れしたかも…
今日中にやらなきゃいけない事、サッさと済ませて、今日は出来るだけ早く寝よ。)
そう心に決め、自宅に向けて足を進める彼女であった。