第11章 追憶のカラクリ箱
その言葉を聞いてから、彼はあごに手を当てて、何かを考えている。
今までの彼女との出来事を、思い出しているようだ。
安室「うーん。
自身で思っている自分像と、周りが感じている姿はイコールでは無いですよ。
他の方が椛さんの事どう感じているかは分かり兼ねますが、
少なくとも僕はそう感じていますよ♪
椛さんと一緒にいると癒されます♪」
そう言ってにっこりと微笑む。
安室より背の低い彼女から見上げるその彼の表情は、青空の背景と相まって、一段とその笑顔は眩しく映った。
椛「、、、
安室さんって、やっぱりちょっと変わってますよね。」
熱がこもる表情を彼に気づかれたくなくて、そっぽを向きながら呟く。
安室「そうですかね~♪」
そうこうしてるうちに、目的の建物前にたどり着く。
立派な門構えに、表札には『神原』の文字。
表札を確認してインターフォンを鳴らす。
「どうぞ。」と言うインターフォン越しの声と共に、門のロックが外れる音がする。
石畳みが敷かれた庭を通り過ぎて、玄関扉に辿り着く。
再度インターフォンを鳴らすと、先日の芝浜離宮恩賜庭園振りにお会いする老夫が顔を覗かせた。
老夫:康彦「おはようございます。
ようこそいらっしゃいました。
どうぞ、お入り下さい。」
安室「おはようございます。お邪魔します。」
椛「おはようございます。失礼します。」
立派な洋建築の玄関に入り、スリッパを履くとリビングに通される。
中に入ると対面のカウンターキッチンに立つ、老婦の姿が目に入った。