第9章 芝浜離宮恩賜庭園
椛「いえ、結構です。
知りたくありません。」
安室「ほう。何故です?」
椛「、、、あの時の安室さん、とても冷たい目をしてましたよ。
暗がりだし、一瞬しか見てないですが。
そんな冷たい目をしてる『男の人』より、『笑い上戸な安室さん』の方が、よっぽど魅力的で素敵だと思います。」
先ほどまで渦巻いていたドロドロした感情が、今の彼女の言葉で流され、変わりに何か、暖かいものが流れ込んでくる事を感じる。
安室(これは参ったな、、、)
今も、今までもそうだが、こちらが定期的に釣り針を投げても、彼女はそれを「スルッ」っとかわしていく。
安室(思っていた以上に『策士』だな、、、。
それとも『自然』やってることなのか?
現段階ではまだ判断できない、、、。)
隣に座る彼女を横目で確認するが、前を見据えてこちらは見ていない。
余計に心理は分からない。
安室「『あの男性』も椛さんの『友人』の方なのですか?」
その質問に彼女はこちらを振り向き
椛「えぇ、そうですよ。
『大切な友人』です。」
安室「そうですか、、、。」
彼女が言葉の頭に付けた、『大切な』と言う単語に、酷く嫉妬している自分がいる事に気づく。
彼女は大人だ。
普通に生活していれば、仲が良い友人の一人や二人、いても全くおかしくは無いし、むしろ至って普通の事だ。
思わず苦笑し
安室(俺は独占欲が強い人間だったのか、、、
あいつらが聞いたら驚くだろうな。
けどまぁ、、、
意外とあいつらの方が俺の事を分かっていて、
ヒロ『えっ??
ゼロ、自分で気づいてなかったの?
子供のころからずっとそんな感じだよ♪』
とか言ってきそうな気もする、、、。)