第9章 芝浜離宮恩賜庭園
既に定年されているぐらいの年齢だろうか。
とても品があり上品なご夫婦に見える。
平日の朝からこんな庭園に来るのだから、まぁ、きっとそうだろう。
椛「ありがとうございます。
奥様も着物お好きなのですか?」
老婦「えぇ、もちろん♪
最近は帯を結ぶのが億劫になってしまって、ついつい遠のいてしまってるけど…
あら♪
お姉さん!!
もう目があまり良くなくてね。
遠目じゃ分からなかったけど、白大島だったのね。
素敵だわぁ♪」
2人が座るガーデンテーブルまでやってくると、安室と椛は席を立ち、老夫婦に『良ければどうぞ』と身振りをする。
老夫婦は軽くお辞儀をして、先ほどまで2人が座っていたガーデンチェアーに腰を下ろした。
老婦「その白大島、ご主人に買ってもらったの??
まだお若く見えるのに…
良いご主人ね♪」
椛「いえいえ、自分で求めた物です。
それに、彼とはそういった仲ではありません。一友人です。」
椛(本当の事は言えないので、とりあえずここは友人という事にしておこう。)
老婦「あら〜、そうだったの。
てっきりそう思ってしまったわ。
ごめんなさいね。
それにしてもそのお着物、ご自身で手に入れたなら益々凄いわね。」
そう言って上から下まで、まじまじと眺めている。