第44章 G線上のアリア
椛「零が今ここで生きている事、私とても嬉しいよ。
もちろん、ヒロ君に出会えた事も…」
抱きしめる腕に力を込めて、更に顔を埋める。
過去は全て乗り越えてきた。
失った物は元には決して戻らない。
生き残った側は先に旅立った彼らの意志を継いで、日々生きていくのみだ。
それが、先に逝った大切な仲間たちへの、降谷なりの仁義だろう。
椛「私はここにいるよ…
貴方が望む限り、ずっと側にいるよ…」
失った物もあったが、新しく増えていく物もある。
降谷(こうして今、側に居てくれる人が俺にはまだ居る…
それで十分だ…)
布越しに重なる体温に、自身の体温を溶かす。
降谷「椛が側に居てくれるなら、どんな無理難題でも出来そうな気がするよ…」
椛(……それは私が居なくても、出来る事が多いお兄さんなら普通の事なのでは…)
そんな事を思い、口角が思わず上がるが、口には出さず…
そっと顔を上げると、2人の視線が重なる。
抱きしめる腕が緩まると、大好きなフワフワのミルクティーベージュの髪に、指先を埋めた。
髪に触れると、彼はいつも一瞬目を細め、そして安心した様に表情を崩し、笑みを浮かべる。
無意識なのが分かるから、余計に胸がくすぐったい。