第44章 G線上のアリア
降谷「…潜入捜査官の消息が途絶えたとなれば、公安はそーゆー事だと処理するからな。
しかも遺体は俺の方で確認してるし、そう上にも報告してる。
そうなればヒロの家の中にある物は、全て処分される。
その前に、何か残すべき物があれば、取りに行こうと思ったんだ。」
分かってはいても、こう言う話を直接耳にすると、
彼らが、どれだけの犠牲と覚悟を持って任務に当たっているのか…
改めて思い知らされる。
親友の死と、そしてその遺体を目の前で確認するなんて…
どんな思いだったのだろう…
想像を絶する…
考えるだけで、胸がキリキリと締め付けられる。
降谷「身バレする様な物は持ち出せないからな…
ヒロも私物は殆ど持ってなかったが…
部屋を見渡していて、このギターが目に止まったんだ。
流石にサイズも大きいし、一瞬迷ったが…
気付いたら手に持って持ち出してた。
俺が唯一持ってる…
ヒロの形見だ…」
椛「零…」
降谷「それを椛に…
見せたいと思ったんだ…」
二人きりのリビングに、降谷の声が静かに響き渡る。
その声色と表情は、静かな悲しみと、それを受け入れてきた時間が滲んでいた。
椛は膝立ちで降谷に寄り添うと、彼の頭を抱え込む様に抱きしめた。
彼女の胸から、心臓の鼓動がダイレクトに降谷の耳に伝わる。
ハッキリと感じるとその鼓動を聞いていると…
力が抜けて、胸の奥の奥の方に掬っている小さな棘のような物が…
ほどけて溶けて消えていく様な感覚がした。