第44章 G線上のアリア
降谷(温かい…)
ヒールを脱いだ椛は、本来の身長差に戻る。
抱きしめると否が応でも感じる体格差と、触れる温もりから、愛おしい思いが更に積もる。
降谷は、抱きしめれば、抱きしめる程に、守るべき存在だと、強く胸に刻まれる…
そんな心地がしていた。
布越しに伝わる鼓動が、
『今を共に生きている』と実感させてくれる。
回した腕を背中を這うように首の後ろに沿わせると、次の行動が分かるかの様に、顔を上げる彼女のその姿が何よりも愛おしい。
降谷「椛…」
一度静かに名前を呼ぶと、吸い寄せられるように彼女の赤い唇に唇を重ねる。
誰に気を使うでも無く、二人だけの空気に染まるこの空間が、下界から切り離された楽園のように降谷は感じた。
暫くお互いの温もりを確かめ合うように、唇重ねていたが、そっと降谷の方から唇が離れる。
額を重ねると、心を落ち着かせる様に一息、息を吐き出し…
降谷「…これ以上キスしてると、1つ目の約束が果たせなくなりそうだ…」
椛「…1つ目?」
そっと身体を離すと、お湯が沸いた鍋からティーポットにお湯を注ぐ。
そのままカップとティーポットを持って、キッチンを出ると、2人はソファへ移動した。
椛がソファへ腰を下ろした事を確認すると…
降谷「少し待ってて?」
そう言って降谷はリビングを出て行った。