第44章 G線上のアリア
4人がけの真っ白なダイニングテーブルと、ブルーグレーのL字型のソファ。
そしてそのソファの前には、ガラスのローテーブルだけが置かれている。
それ以外、家具らしい物は置いていない。
降谷「物がないから余計に広く感じるかもしれないけど、平米数で言ったら椛の家の方が広いんじゃないか?」
リビングを見渡す椛と、オープンキッチンの中に入り、お茶の用意をし始めた彼。
初めて見る彼の家のキッチンの中で、作業をしている姿がやけに新鮮に見えた。
リビング見学をやめて、降谷がいるキッチンに椛も入る。
カップの用意をしている降谷に、後ろから腕を回して抱きつく。
降谷「椛?」
名前を呼ばれて、更にギュッと腕を回す力を強めると…
椛「零の家に、連れてきてくれてありがとう…」
普通の…
所謂『一般人』だったら、
そんな大した事ではないかも知れないが…
目の前にいる彼は、最前線にいる公安の潜入捜査官だ。
そんな、国のトップシークレット案件を扱う人の家に入れてもらえる事が、どれだけ特別な事か…
少なからずここ数ヶ月間、公安の協力者として携わってきた椛には、その重みが痛いほど伝わってきていた。
降谷「俺も…
今ここにこうして椛がいる事が嬉しいよ…」
カップを用意していた手を一度止めて、自身の腰に回されている彼女の腕に手を添えると、そっと解く。
そのまま体の向きを変えて、正面からしっかりと抱きしめ返した。