第42章 ポアロのギタリスト
15分ほど経ち、作業を終えた椛が手を拭きながらリビングに向かう。
降谷は近づいてきた椛の気配に気付くと、ソファに腰を据えたまま、軽く手を差し伸べる。
そして椛は差し出された手を、素直に取った。
降谷「仕込み作業おつかれさま。
無事完了かな?」
椛「うん、終わったよ。
待たせてごめんね。」
降谷「椛が謝るような事は何一つない。
それに俺は公安の犬だからな。
『待て』は慣れてる。」
ソファに座る降谷と未だ側に立っている椛。
ゆっくりとした仕草で、椛の手の感触を楽しむように指先で撫ぜる。
そんな繊細な仕草に、触れられているところの感度が、いつもより上がっていく気がした。
降谷「さて……次は、
思いっきり抱きしめる番だな。」
彼の言葉に、椛は思わず笑みを漏らしながらも、心の中の女が震えるのを感じた。
夜の空気が、二人を包み込み、先ほどの静かな駆け引きが一気に熱い現実に変わる瞬間だった。
彼女の腕を引くと、降谷の胸の中に椛が倒れ込むように引き寄せられる。
腕が再び、彼女の身体を包み込む。
身体と身体が密着する温度と鼓動が、互いの熱を引き出す。
降谷の腕の中にすっぽりと収まる椛。
布越しに感じる彼の鼓動が、
自分の心臓と重なるようにゆっくりと、しかし確実に速さを増していく。
その微かな変化が伝わってきて、
椛の胸にも温かい波が広がった。