第42章 ポアロのギタリスト
背中を這うように、心地よい熱が広がる。
夜の匂いを纏わせる声で囁かれると、嫌でも腰が疼く。
降谷の腕がさらに強く回り込み、肩から背中にかけて密着する体温と鼓動が伝わる。
椛は思わず身体を委ね、頭をわずかに傾けた。
視界の隅に見える薄暗いリビングの灯りが、二人の影を静かに揺らしている。
椛「……零、だから火の側で…
近いってば……」
降谷は少し笑みを漏らして、指先を椛の髪に滑らせる。
髪に神経は無いが、その優しい手つきに…
手のひらの柔らかさ、指先の温かさが伝わってくる様な感覚がする。
降谷「……ここじゃなければ本当は、
もっと近づけるだろ?」
耳元の囁きが、脳内で何度も反響する。
そしてボタン空きの隙間から彼の指がスッと入ってきて、直に椛の肌に触れる。
『布が邪魔だ』とでも言いたいのだろう…
呼吸が少し早くなったのを感じながらも、
今は振り向かず、目の前の作業に集中するふりをして、心を落ち着かせる。
夜の静けさの中、微かに外の風がカーテンを揺らし、その空気ごと、降谷の温度と存在が、椛の全身に沁み込んでいく。
本当は今すぐ振り向いて、口づけを交わしたい衝動に駆られるが…
ここはグッと抑えて心を落ち着かせる。
椛「…わかったから…
今日の仕込みが終わるまで、もうちょっと待ってて…」
降谷「…じゃあ、それまで俺もソファに戻って作業するよ。」