第42章 ポアロのギタリスト
耳元に落ちてくるような距離で話す彼。
椛は思い切り振り向いて、すぐ後ろにいる彼に、驚きの表情を向けて見つめる。
振り向いた先には、降谷の穏やかな表情が視界いっぱいに広がっていた。
降谷「?
あぁ、もちろん。
椛が良ければいつでも。」
椛「そうなんだ…」
降谷は、変なことを言ったつもりは無いが…
思いの外、驚きの反応を見せた彼女の様子が気になり、降谷は少し首を傾けながら問いかけてくる。
降谷「なんか俺、おかしな事言ったか?」
椛「おかしいというか…
いつも零がうちに来てくれてたし…」
降谷「それは、いつも椛が家にいる時間に俺が会いに行くから、必然的にそうなってただけだよ。
それに、俺の家はほぼ寝に帰るだけで、何も無いし。」
椛「…公安の人の家って企業秘密で、
他人は行っちゃいけないのかと思ってた…」
降谷「あはははっ!
企業秘密って…w
…まぁ、確かに。
そんなに誰でも構わず家に入れる事はないし、教えることも無いが…
椛なら来てくれてもちろん構わないよ。」
最後は、いつも以上に優しいトーンで声をかけるものだから…
その雰囲気とその言葉の内容に、胸の中が満たされていく感覚がした。
ふっと笑いながらも、続く言葉はいつになく穏やかで…
その声は、柔らかい。
彼が普段、外で抑えている感情がほんの少し溢れたみたいに…
椛の胸の奥がじんわり満たされていく。