第42章 ポアロのギタリスト
景光の話が出るといつもそうだが…
どうしてもお互い、表情が緩んでしまう。
ふんわりと笑う優しかった景光の笑顔が、
お互いそれぞれ脳裏に浮かぶのだろう。
椛「じゃあ世良ちゃんは、零の事知ってて初対面のフリ、
今日してたって事?」
降谷「当時、俺はキャップで顔をキャップで隠してたからな。
少し疑っている様子はあったが…
まぁ、気づいてないだろう。」
椛(そうかな…
自分では隠してるつもりでも、顔見えてなくても雰囲気とオーラで目立つタイプだと…
やっぱり自覚ないのかしら…)
夕飯を食べ終わって空いた食器を手に、降谷がキッチンに入ってくる。
食器を洗い始めた彼の隣で、鍋をかき混ぜている椛。
彼の手元に視線を向ける。
椛「それにしても零のギター捌き…
カッコよかったなぁ…」
昼間のポアロでの出来事を思い出しているのだろう、椛の表情が嬉しそうに緩む。
降谷「あれぐらい、練習すれば椛だって弾けるだろ?」
椛「私は弦楽器は触れてこなかったもん。
ギターは弾けないよ?」
食器をあっという間に洗い終えると、コンロの前で鍋を回し、明日の仕込みをしている彼女の背後に立つ。
そして、後ろから腕を回して甘えるように抱きしめる。
すっぽりと腕の中に収まる彼女との体格差に、降谷はいつも庇護欲が掻き立てられる。
椛は背中に感じる彼の温もりに、安心感を覚える。
そして近づいた距離と、耳にかかる彼の息に少しくすぐったさを感じた。