第42章 ポアロのギタリスト
降谷「椛、ただいま。」
椛「おかえりなさい、零。」
伸ばされた腕に吸い寄せられる様に背伸びをして、彼に抱きつく。
ポアロの日はいつも、ほのかに服にコーヒーの匂いが残っている。
椛はこの、コーヒーの香りと彼の香りが混じった匂いが、好きだった。
降谷は降谷で椛の肩口に顔を埋めて、彼女の香りを吸い込むように一呼吸置くと、そのまま首筋に口付けを落とす。
唇で辿るように首筋を上がってくると、少し顔を離して今度は薄く開いた彼女の唇に口付けを落とした。
啄む様に唇の感触を楽しむと、そっと離れていく。
降谷「…やっと、
キス出来た。」
額を合わせてホッとしたように呟く彼は、穏やかな笑みを浮かべている。
椛「……ポアロじゃ会ってもキス出来ないから?」
降谷「正解…」
椛「もう……
うふふふっ♪」
こんな短い些細なやり取りに、幸せを感じる。
外で見るより、穏やかに笑みを浮かべる彼を見ていると、椛も心が軽くなる心地がした。
ただいまの抱擁が終わると、玄関の鍵を閉めて2人でリビングに入る。
降谷「まだ仕事してたのかい?」
リビングに入り部屋を見渡す降谷。
ダイニングテーブルに置かれたノートパソコンが目に入ったからこそ出た質問だろう。