第40章 立夏の約束事
椛(なんかデジャブというか…
駅に送ってもらうの懐かしいな。
あの日は私、着物を着てたんだよな。
約束が一つずつ形になっていくこの感覚、平和だな…)
今まで、出会って間もない頃の出来事を思い出しながら改札を抜け、ホームへ上がると次の目的地へと椛は向かって行った。
彼女と別れた安室は、とあるホテルの駐車場に車を止めていた。
車内で、約束の人物が現れるのを静かに待つ。
すると駐車場内にヒールで歩く音が響く。
安室(…来たか。)
真っすぐと安室の車に足音が近づいてくる。
車の前で足音が止まると、内側から助手席の扉を開く。
ベルモット「待たせたわね。」
バーボン「いえ。
貴方が時間通りに来ることなんて、無いじゃないですか。
貴方を待つ事には慣れてますよ。
ベルモット。」
ベルモット「あら、貴方も随分なことを言うようになったわね。
バーボン。」
ベルモットが助手席に乗り込み、車の扉を閉めると、車はすぐさま独特のエンジン音を吹かせ発進する。
明るいブロンドヘアをなびかせながら、足を組み、けだるそうにシートベルトを締めるその姿が、何とも彼女らしい。
ベルモット「バーボン、貴方…
私を迎えに来る前に、ここに他の女を座らせていたの?」
椛は、香水やそれに関連するような残り香を残すようなものはつけていない。
それ以外にも、前に誰かが座っていたような形跡は、残っていないはずなのに…
唐突に、そんなことを言いだしたベルモット。