第40章 立夏の約束事
椛「…そんなの…
いつもしてる…」
安室「ふふっ♪
反物、仕立て上がりが益々楽しみになりましたね。
色々諸々含めて。」
椛「もう…
色々諸々って…」
安室「それにしても、椛さんがヤキモチ妬いてくれるなんて嬉しいなぁ〜♪」
突然男の色香を漂わせたり、拗ねたり、喜んだり…
今日の安室は、表情がいつも以上によく変わる。
そんな事を椛は思いながら、車内で会話を進めていると、楽しい時間はあっという間に過ぎる。
この後、それぞれ別件があるため、近くの駅のロータリーに車を一時停止させた。
安室「次の行き先まで送れなくて、すみません。」
椛「いえいえ、呉服屋さんに思いのほか長居してしまいましたからねw
ここで十分です。
ありがとうございます。
安室さんこそ時間大丈夫ですか?」
安室「大丈夫ですよ、飛ばしますから。
法定速度の範囲内で♪」
椛「あははははは!」
こうして軽口を交えて話せる瞬間にも、なんとも言えない幸福感を感じてしまう。
椛「呉服屋さん一緒に行けて楽しかったです。
あと、浴衣の件も本当に。
ありがとうございます。」
安室「お礼を言うのはこちらの方ですよ。
いつも僕の知らない世界を見せてくれて、ありがとうございます。」
最後お互い笑顔で挨拶を交わすと、椛は車を降りて安室を見送る。
車が去ったのを確認すると、そのまま駅に入って行った。