第40章 立夏の約束事
安室「いつも突然家に会いに行っても、嫌な顔せず受け入れてくれる。
そしていつも美味しいご飯をたくさん、ご馳走してもらってる。」
椛(えっ?ご飯?)
椛「そんなの大したことじゃないよ?」
安室「椛さんにとって大したことじゃなくても、僕にとっては大したことだよ。」
椛「けど…」
安室「それに…」
彼女の言葉にかぶせるように言葉を放つと、空いているもう片方の手を、彼女の柔らかい頬に添える。
安室「こうして、2人で過ごす大切な時間をもらってる。」
椛(えっ、時間?)
椛「それを言ったら、私だって安室さんの時間貰ってるよ!
私よりも安室さんの方が、よっぽど忙しいだろうに…」
目を伏せようとした彼女を引き留めるように、顔を近づけて瞳の中を覗き込む。
このライトブルーの瞳に捕らわれると、吸い寄せられるように目が離せなくなる。
椛はいつもそんな感覚がしていた。
安室「今の俺にとって、2人で過ごす時間が、かけがえのない宝物なんだ。」
椛(零…)
安室「君と出会ってから十分すぎる程…
沢山の物を椛から貰っているよ。」
そこには2人きりでいるときしか見せない、本来の穏やかで柔らかい笑みを浮かべている彼の姿があった。