第40章 立夏の約束事
そのまま更に距離は詰められて、柔らかい唇がそっと重ねられる。
大切なものを慈しむ様な口付けが落とされると、椛は握られてる手に思わず力が籠った。
暫く口付けを堪能した後、そっと唇が離れる。
安室は満足そうな笑みを浮かべながら、顔を離した。
ずっとこのまま停車しているわけにもいかないので、ハンドルに手を戻すと車を発進させる。
椛(甘い人だとは分かってきてたけど…
これはまた甘すぎる…
甘すぎるぜ…
降谷零という男は…)
照れてしまった顔を隠す様に視線を外に向けて、熱がこもり始めてしまった顔を冷ましていると、再び彼の方から声がかかる。
安室「椛さん?」
椛「はい、何でしょうか?」
安室「男が女性に服を送る理由を知っていますか?」
なんだか唐突なその質問に含みを感じて、外に向けていた視線を運転してる彼にゆっくりと向ける。
今の彼の横顔からではあまり、質問の真意を読み取る程の情報は得られなかった。
椛「どうゆう事ですか?」
なんとなく嫌な予感というか…
胸がざわめく感覚がして、何もわからないふりをする。
安室「椛さんは花火はお好きですか?」
椛(えっ?花火?)
椛「??
花火は大好きですけど…」
安室「先ほどの反物が仕立てあがったら、それを着て一緒に花火を見に行きたいです。」
椛「いいですね。
もちろん賛成です。」