第40章 立夏の約束事
顔を少し赤らめて、嬉しそうに返事をする鈴木の姿に、
『落とされたな』と思いながらその様子を見守る。
椛(本当は公安警察官だけどね…
それにしても人タラシが過ぎるよな…
もうこれは、天性の才能なのかしら…)
褒めてるのか咎めてるのか、そんな事を頭の中で1人思っていると、受け取り伝票を手に持った石垣から声がかかる。
石垣「結城様、ご主人の夏着物に合わせる帯や、その他付属品は仕立て上がりの時でよろしいですか?」
椛「そうですね。
その時、今回の夏着物に合わせる帯等、選ばせて頂いても良いですか?」
石垣「もちろんでございます。
良さそうなものをいくつか、ご用意しておきますね。」
椛「ありがとうございます。
私は帯は合いそうな物をいくつか持っているので、私の方は今回追加は特に無さそうです。」
石垣「かしこまりました。ではお受け取りの時、またお待ちしております。」
仕立て上がりに1ヶ月程かかるため、次回の来店の予約を入れると、鈴木と石垣に挨拶を済ませて、2人は店を後にした。
椛「安室さん?」
安室「はい。」
椛「先ほどはありがとうございます、浴衣の件。」
安室「いえいえ、僕がしたくてしたことですから。
それに、椛さんがプレゼントしようとしてくれた事、嬉しかったですよ。
ありがとうございます。」
駐車場までの道を2人、隣に並び歩きながら進む。