第40章 立夏の約束事
されるがまま、鏡の前で直立不動だったが…
『何かこちらも手伝った方が良かったのか?』
と気になり彼女に声をかける。
安室「椛さん?
何か…まずかったですか?」
彼の言葉に、一点を見つめたまま我に返ると、しみじみと小さく一言。
椛「カッコよ…」
安室「えっ?」
椛「和服まで似合うなんてズルすぎ…」
言葉とは裏腹に、彼女の表情は嬉しそうだ。
そんな椛の様子を見て、安室も少し照れた様に微笑む。
後ろで控えていた鈴木と石垣にも、椛の声は届いており、そんな2人の様子を満足そうに眺めながら、微笑んでいた。
そのまま石垣が持ってきた反物を、それぞれ順番に安室に当てていく。
何かを吟味する様に、静かに頷く椛とは対照的に、鈴木は興奮気味に都度感想を言う。
その合間に、石垣はしっかりと、その織物のそれぞれの特性を説明していた。
全ての反物を当て終わると、畳の上に並べて生地感を確認している椛。
そんな彼女に声をかける。
安室「椛さん?」
椛「…安室さん、初めて反物当ててみてどうでした?」
安室「そうですね、こうして実際に当ててみるとイメージがより湧きますね。」
椛「何か、着てみたいと思ったのありましたか?」
安室「うーん…
どれも素敵な反物だと思いますが…
あえて順位をつけるならこれですかね。」