第40章 立夏の約束事
安室「ちなみに、今回選んでいる反物はどんな特徴があるのですか?」
石垣「結城様からは今回、総絞りで藍が入った反物をご所望されてました。
産地の指定は無く、古典柄でデザインが美しいものを選んで欲しいとの事でしたので、それでいくつかご用意させて頂いてます。」
安室「なるほど…
彼女らしいですね。」
石垣「そうですね。
私どもの様な仕事をしていても、中々今どき、この若さでそんな女性珍しいですよ。
本当、結城様の様な方が増えれば、着物業界の衰退も無くなると思うのですけどね…」
安室「成程、そうですか…」
石垣「すみません、変な意味ではなかったのですが、少しマイナスな話を溢してしまいましたね。
大変失礼しました。」
安室「いえ、とんでも無いです。こちらこそあまり見識がなく申し訳ない。」
石垣「いえいえ、とんでもない事です。」
そのまま2人で会話を続けていると、反物をすべて当て終わった女性陣2人は、最後の一本をどれにするかで話を進めていた。
鈴木「やっぱりこちらですかね…
こっちも捨て難いですが…」
椛「そうですよね…
あぁ〜、でもこれも素敵なんだよな…色の出方が…」
鈴木「そうですね、それもとても良くお似合いでしたよ…」
椛「それを言ったら、さっき外したあの子もやっぱり、捨てがたいですね…」