第40章 立夏の約束事
鈴木「もう、本当にずっと気にしていたんですよ。
余計なお世話だと思うけど…
結城様からはいつも、全く男の人の匂いがしないから。」
椛「えっ、ちょっと鈴木さん!」
鈴木「ご主人とお呼びしてよろしいのですか?
お名前の方がよろしいのでしょうか?」
安室「僕は…」
椛「ご主人では無いです、鈴木さん…」
安室の言葉にかぶせるように言葉を放つ。
今までの経験から出た言葉だろう。
以前にも似た様なやり取りがあったので、安室にとっては、そんな彼女の対応は想定内だったのか…
安室「今はまだ恋人ですけど、その呼び方で構いませんよ。」
椛(えっ?)
完全ににっこりと、人当たりの良い笑みを鈴木と石垣に向けている安室。
誰がどう見ても爽やかなその笑みに、鈴木はやられたのか…
鈴木「まぁ!そうですよね♪
結城様ったら、照れてるだけですよ!
ねっ!」
隣にいる石垣に同意を求めるように顔を向ける鈴木。
石垣「はははっ!
素敵な殿方を見つけましたな、結城様は。」
安室「ふふっ。」
楽しそうに笑う鈴木と石垣。
そして満足そうな笑みを浮かべる安室。
椛(もう…)ジト目
照れを隠す様に、少し恨めしそうに安室に視線を向ける椛。
呉服店には、なんとも言えない穏やかな空気が漂っていた。