第40章 立夏の約束事
今日、椛はオフの為、11時から呉服屋の予約を事前にしていた。
今年の浴衣を新調するためである。
既に何枚か持ってはいるが、大分着倒しているので、そろそろ新しい浴衣をお迎えしようという所だ。
それを先ほど家で聞いた安室が
『自分もその時間は時間があるので、一緒に行きたい。』と言い出して、そのまま共に家を出て…
今に至る。
安室「呉服屋さんに行くのは初めてだから、楽しみだな。」
椛「そうだよねw
中々、フラッと立ち寄る所でも無いしね。
お店の中見てるだけでも目の保養になるよ♪」
運転席に視線を向けると、ご機嫌な表情の彼の姿が目に映る。
安室「それに今日、椛と外に一緒に出掛けられると思ってなかったから、昨日に引き続き嬉しい。」
椛(え?)
前方に向けていた視線を一瞬彼女の方に向けると、ニコリと微笑みを向けてくる。
喜びを素直に言葉で伝えてくれる所も…
さわやかすぎるその笑みも…
そんな彼の言葉と姿に、即座にドクリと反応する心臓がすこし恨めしい。
椛(もう…
不意打ちズルい…)
少し照れてしまった表情を隠す様に、彼女も前方に視線を向けた。
そんな彼女の様子に気づいたのか、彼は満足そうな笑みを浮かべて車を走らせていた。