第40章 立夏の約束事
降谷からの返答を待っているのか…
ジッと目を逸らさず、真っ直ぐ瞳の奥の奥を見つめてくる様な椛のその姿に、降谷は心の奥底にある感情を見透かされそうな心地になる。
先に耐えきれなくなったのは降谷の方…
静かに重なっていた目線を横にずらした。
降谷「…君は残酷な人だ…
椛と話していると…
普段は隠している自分の醜い部分が、どんどんと曝け出されていくような心地がするよ…」
切なそうに揺らいだ彼の瞳に、なぜかこちらも同調するように切なく胸がうずく。
椛(零と秀一をつないでいた糸は、随分と絡まりまくっているのね…)
逸らされてしまった彼の頬に、静かに手を添える。
椛(直接的でも、間接的でも…
貴方に秀一を殺させたりはしないわ…
亡くなったヒロ君の為にも…)
頬をそっと優しくなぜると、少しくすぐったかったのか、彼は目を細めた。
椛「私は残酷か…
残酷な事言う女の事…
嫌いになった?」
降谷「…いや、君の言ってる事は実際正しいし、そんな事で嫌いにはならない。
俺に、そんなにハッキリと物申す人物はプライベートでは今、いないしな…
むしろ…
少し癖になりそうだ…」
椛(えっ?癖?)
予想してなかった返答に、少し体の重心の力が緩む。