第40章 立夏の約束事
椛(警察学校卒業式の日…
ヒロ君から別れを告げられたあの日から…
サヨナラの一番の理由は、
『私を危険に巻き込みたくない』
という事だと思ってた。
あの時、直接そう言われたわけではなかったけど…
その後、こうしてなんの因果か。
公安の協力者という立ち位置に立ってからというもの、宙に浮いていた細々した小さな疑念が、確信に変わった事がいくつかあった。
『この国の正義の為なら、どんな違法捜査もいとわない。』
それが公安という組織だ。
警察学校卒業式の時点では、配属先でどんな任務にあてがわれるなんて事はもちろん、本人にも分からない。
けど、私が感じていた以上に、
『その正義の為に、自分の手を汚していく覚悟と決意』
が、あの時のヒロ君の中で既に、
『大きな比率を占めていたのではないか…』
と今では思う。
そして
『それに染まっていく未来の自分』
を、ヒロ君は私に見せたくなかったのではなかろうか…)
今、目の前いる彼。
そんな全てのしがらみと現実を乗り越えて、今もここに生きている。
優秀で、頭もキレ、洞察力も、具現化出来る実行力も長けている。
どう考えても、一流の公安警察の捜査官であることは、疑いようのない事実だ。
けど…
椛(たまに…
無性にどうしようもない程に…
庇護欲を沸きたてられる瞬間があるんだよな…)
今、目の前にいる彼が正しくそんな感じだ。
椛(ヒロ君を…
幼馴染の親友を失った悲しみが大きすぎて、その時側にいた秀一に、敵意を向ける形で感情を制裁したのか…)