第40章 立夏の約束事
何の感情も宿してない様な淡々とした声色と、彼を逆なでするような言い回しに、降谷の目の熱が一気に冷めるのを感じる。
その瞳の中には何の光も宿しておらず、あまりの冷徹な色に、彼の纏う雰囲気がガラリと変わる。
こんな事もちろん言いたくなかったが、ここで笑ってごまかしても、何もなかったように受け流したとしても…
今後のお互いの為にならないと、彼女は判断したのだろう。
椛「私に今の仕事と、今持っている交友関係を全て断てと…
貴方は言いたいの?」
先ほどまで、平和で穏やかな時間が流れていたリビングだったが、それはあっという間に過ぎ去ったように、室内の空気が完全に冷えてピンと張り詰める。
そんな中、彼女は言葉を続ける。
椛「その『沖矢昴』の正体を暴いた後、零はどうするつもりだったの?
言葉の通り、正体がそのFBI捜査官だったら、ヒロ君のかたき討ちのつもりで、その場で消すつもりだったの?
それとも組織に引き渡して、組織の手で消させるつもりだった?」
降谷「…」
目の前にある彼の瞳の奥が一瞬揺らめく。
僅かな変化も見逃さまいと、彼の瞳をジッと覗き込む。
しんと静まり返った室内。
際ほど入れたハーブティーの香りが、ここに来て妙に鼻についた。