第40章 立夏の約束事
椛(秀一は、随分とまぁ…
損な役回りをかって出たものね…)
それと同時に、優しかった景光の笑顔が彼女の脳裏に蘇った。
椛(ヒロ君…)
降谷「椛の仕事に、口を出すつもりはないが…
俺の推理が本当に正しければ、あの広い邸宅にそんな人殺し男と2人きりだなんて…
いくら知らなかったとは言え、あまり感心できないな…
それに、それを差し置いても、大の男と家に2人きりだなんて…
周りに何を疑われても、言い訳出来ないだろう…」
椛(!?
この人何言って…
…本気でそんな事思ってるのか…)
椛の瞳の色が一気に冷めていく。
元々ソファに隣同士で座っていたため、2人の間にそこまで距離は空いてなかったが…
じりじりと間合いを詰めるように、にじり寄ってくる降谷。
ソファの端、肘当てまで追いつめられると、今まで話を聞く側だった彼女の口が静かに開く。
椛「昴さんが生徒さんなのは、零と出会う以前からの事だわ。
貴方の思う様な、人に言えない様な関係ではもちろん無いし。
それに、私の仕事の事を言うのなら、零だってよく組織の女、助手席に乗せてるんでしょ?
それにあまり考えたくないし、想像したくないから、考える事を避けてたけど…
組織で、その今のポジションに上り詰めるまで、外の世界では言えないような事、沢山してきたんじゃないの?
女性の扱いにも随分と、慣れていらっしゃるご様子ですし。
情報屋ですものね。
口を割らせるには、その見た目、利用しない手はないでしょうしね。
そっちで済めば、無駄に血を流すことも避けられるでしょうしね。
だからしょうがないんだろうけど。」