第40章 立夏の約束事
椛「…私にとっては一生徒さんだし、昴さんは昴さんであって、それ以上でも以下でもないわ。
零は?
昴さんがどこの誰だと思ってるの?」
降谷「あの男は恐らく…
俺が殺したいほど憎んでいる男だ。」
椛(え?…殺したい?)
椛「…どう言う事?」
降谷「組織内では死んだという事になっているが、コードネームはライ…
FBIの潜入捜査官、赤井秀一…
ヒロを見殺しにした男だ。」
椛(え?…見殺し?)
降谷からの発言に一瞬思考が止まる。
以前、赤井と景光の最後の話をした時の記憶が蘇る。
見殺しどころか、景光がNOCだと組織にバレて消されそうになったところを、組織に始末される前に駆けつけて、『自分もNOCだ』と正体を景光に打ち明けて、そのまま逃がそうとしたと言っていた。
『彼の事は今でも悪かったと思っている。
助けてやれなくて、本当にすまなかった。』
椛にそうに言った赤井の姿…
とても苦しそうに、張り詰めた表情をしていた。
あの発言が嘘だったとは、もちろん到底思えない。
それに、助けに向かっていた降谷の足音を追手と思い、拳銃で胸を撃ち抜いたと言っていた。
『自分の足音で仲間を自死に追いやった』
と思わせない様、秀一が咄嗟に何か工作やカモフラージュをしたであろうことは、赤井の性格を知っている椛からしてみたら容易に想像出来る。