第40章 立夏の約束事
椛(すごい…すごいよ、零!
正解!!
なるほどね…
これが、組織一の探り屋と言われる所以の姿なのか…)
元々彼がずば抜けて優秀だという事は、理解していたが…
こうして目の前にすると、賞賛の言葉しか出てこない。
椛(こんな零を欺いてかわすなんて…
やっぱり工藤家の頭脳は末恐ろしいな…)
表情に心の内は出さずに、黙ってポーカーフェイスを決め込みながら彼の話に耳を傾ける。
降谷「椛はその『沖矢昴』と以前、2人で車に乗っていたな。」
椛「…そうね」
降谷「『大切な友人』だとも言ってた。」
椛「…えぇ、言ったわ。」
降谷「あの時間、男と2人で車に乗るなんて、よっぽど『沖矢昴』に信頼を置いているんだな。」
彼女に向けて話してる声のトーンは変わらないが、目つきが段々と鋭くなっているのは気のせいではないだろう。
それは果たして公安としての顔なのか、恋人としての表情なのか…
降谷「あの男はそもそも、『椛先生』の生徒で、定期的にあの男の借り住まい…
『工藤邸』に講座で足を運んでるそうじゃないか。」
椛「えぇ、そうね…」
降谷「勘の良い君の事だ。
椛はあの男に対して何か、違和感を感じたことはなかったのか?」
椛「…どう言う意味?」
降谷「『沖矢昴』が仮初の姿だと、分かって接していたんじゃないのか?」