第40章 立夏の約束事
盛り付けの終わった朝ごはんが、キッチンカウンターに全て並ぶ。
それらをダイニングテーブルに移そうと、キッチンから出ようとする彼女の腰に腕を回して、引き留めた。
椛「おっと!
ちょっと、何?」
バランスを崩しそうになった彼女の腰をグッと抱き寄せると、ピタリと体が重なる。
降谷「まだ足りない…
本当はもっとしたい…」
椛「えっ…零っ…んっ!?」
いつもより若干低いテノールで囁かれると、顎に手を添えて上を向かされる。
彼女の顔に彼の影がかかると、早急にキスが降りて来る。
そのまま手は頭に回されて、しっかりと固定されてしまった。
行き場を失った彼女の両腕は、胸の前で窮屈そうに折り重なる。
目を瞑る間も無く、自分とは異なる彼独特の褐色の肌が目の前に広がった。
椛は腕で胸が押しつぶされて、上手く呼吸が出来ない。
そんな状況には気付いてないのか、気付かないフリをしているのか…
彼からの口付けは止まる気配がない。
流石に苦しくなってきて、訴えるように何とか彼の胸を叩くと、わずかな水音と共に唇が離れた。
椛「すぅ〜はぁ〜…
もう!零!」
思い切り酸素を吸った後、恨めしそうに彼を見上げる彼女とは対照的に、彼はとても満足そうな笑みを浮かべていた。
椛「キス魔認定しますっ!!」
降谷「あははっ!!
別にその敬称嫌じゃ無い。
何とでも言ってくれ♪」
今日のキッチン内も、平和に食事の準備が進む。